開業を考え始めた全先生に言えるアドバイスとしては「領収書」を集めることです。
開業準備に関わる出費は、開業後に全て経費とすることが可能です。開業の為の打ち合わせは勿論、知り合いの先生に開業の相談をし、アドバイスを貰った際の食事代等も経費として役に立ち得ます。医院開業を意識し始めたその日から「この出費は開業に繋がる出費になり得るだろうか?」という視点で領収書を集めてみてください。
その領収書が経費化可能か否かは顧問となる税理士さんと相談して決まることも多いですが、無いもので議論はできませんので、必ず領収書を集めるようにしておきましょう。
また開業の成功、開業後の成功を左右する大きな要素として「お金の使い方」があります。私達が良くお話をするのは「ヒト遣い」と「カネ遣い」の双方を上手にすることが、成功への道に繋がります。 私達が考える良い「カネ遣い」とは、「事業にとってプラスになり得る出費は、費用対効果を検討しながらも惜しまず、事業にとってプラスにならない出費は控えること」です。
プラスになるお金は積極的に使うべきですが、「その出費でどれほどのリターンを得られるのか。」という疑問は常に持つべきです。
例えば、商業施設に出店している医院が、商業施設に向かう道路の一端に大きな看板を設置することを検討しているとします。看板の初期設置費用に数十万円、毎月数万円の維持費用が必要という見積もりが出ていたとして、「この看板で何人の人を呼べるのだろうか?」と検討する姿勢を忘れてはいけません。
おそらくこのケースであれば、看板の予算をホームページやWEBマーケティングにかけた方がより多くの集患を望めるでしょう。
またプラスにならない出費とは、過剰な飲食代、物品購入代です。開業時に運転資金を含めて多額の金額が通帳に入りますが、飽くまでも他社から調達した借金であり、事業収支では赤字であることを忘れてはいけません。
医院経営が安定して、借入金の返済や税金の支払いまで含めて事業が回るようになるまでは、事業の黒字化に専念し、不要不急の出費は避けましょう。
「確定申告とは誰が行うものでしょうか?」という質問をすると、「税理士の先生が行う。」という回答が多いです。
実は違います。確定申告とは飽くまでも自己申告です。
税理士の先生にどこまで任せるか等は人それぞれですが、「任せたから自分の責任ではない」という姿勢は不正解です。自分の確定申告を“代理”で申告手続きをしてくれているのが税理士の先生です。
院長:「A先生。自分はこういう申告をしてほしいです。」
A税理士:「先生、これは税務的に危ないかもしれません。理由は~」
院長:「なるほど。そういうリスクもあるのですね。そのリスクについては分かりましたが、それでもそのように申告してほしいです。」
A税理士:「院長がリスクを承知した上で、そのようにしたいという事であれば、そのようにしましょう。」
というやり取りは、一見危ないように見えますが、正常な姿だと考えます。
“代理”をして頂いていると考えるべきなので、全ての事に従う必要はないのです。一方で、全ての事に反対していては、代理を頼んでいる意味がありません。大いに議論をして、院長が納得する形で申告を行えるようにしましょう。
また、全幅の信頼で任せきるという意思決定も大いにありです。その信頼にしっかり答えて頂ける税理士先生も沢山います。
「よく分からないから、取り敢えず任せる」という姿勢とは少し違うニュアンスであることは理解しておいてください。
開業後、「しっかりと税理士先生とお付き合いできていないな」と考えている院長は是非一度悩みをお聞かせください。
大抵はその感覚は正しいものです。
税理士の交代も含めて検討しましょう。